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ある日、Tさんから電話がありました。 いつもは明るい声の方なのに、その日はなぜか、とても沈んだ声でした。 話しを聞いてみると、「両目が失明してしまうかも知れないネコを保護している」 と言うのです。 何度も診てもらった獣医さんから、「直らない確率のほうが高い」と言われ、 とても落ち込んでいました。 Tさんが以前に飼っていて、数年前に亡くなったネコにそっくりなので、 同じ 『コンちゃん』という名を付けて、とてもかわいがって世話をしていた外ネコでした。 そのコンちゃんが、失明してしまうかもしれないと言うのです。 Tさんとコンちゃん 公園から保護してきたコンちゃんは、病院で包帯を巻かれて両目が見えず、 知らない家のニオイの中で、ただ怯えたり、怖いがために威嚇したりしていました。 目の見えないコンちゃんに、世話をしている人が、 いつも公園でかわいがってくれるTさんだとは、分るはずもありません。 Tさんの家には、たくさんのネコがいますので、 知らないネコたちの声も 怖かったんだと思います。 それまでTさんが保護して元気になったネコの中で、室内飼いに馴染めないコは、 しかたなく公園に返していましたが、コンちゃんもそんなコだということは、 前に一度、コンちゃんを保護した時に分っていました。 しかし、もし本当にコンちゃんが失明してしまったら、 それまで暮らしていた公園へは、もう帰ることは出来ません。 コンちゃんは一生、知らない家の中で、怯えながら、暮らすしかないのです。 途方に暮れたTさんは、自分と同じようにネコたちを世話している仲間に電話をかけて、 どうすれば一番コンちゃんのためになるだろうかと、聞いているのでした。 それまで安楽死には絶対に反対だったTさんが、初めてその選択肢を考えたと、 泣きながら言うのです。 獣医さんからも、そう薦められたということでした。 私は、Tさんに意見を求められても、何と言ったら良いのか、 どうすればコンちゃんの為になるのか、まったく分りませんでした。 ただ、Tさんと一緒に泣きながら、怯えて暮らすコンちゃんの姿を見ながら、一生世話を続けるのは、 本当につらいことだろうと話しました。 本当にどうすれば一番良いのか、話しても話しても、結論なんて出てきません。 そんな電話があった1週間後、Tさんから、今度は明るい声で電話がきました。 コンちゃんが、別の獣医さんに診てもらったところ、奇跡的に回復したと言うのです。 その時の、嬉しそうなTさんの声は、今でも忘れられません。 私も本当に、本当に、ほっとしました。 もしかしたら天国の『コンちゃん』が、そのコを救おうと懸命にがんばっているTさんへ、 恩返しとして力を貸してくれたのかもしれません。 今では、暮らしなれた公園に戻り、Tさんの姿を見つけると、嬉しそうに走って来るほど元気になったのです。 ![]() |
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